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祝婚―1

居酒屋で先輩が結婚の報告をして、乾杯をした。


もともと感情豊かで色んな表情を見せる先輩ではあるが、このときの笑顔は、どこか安心したような、柔らかで朗らかな今まで見たことのない種類の表情だった。


先輩の友人たちはアツい人ばかりで、すでに「結婚式でアレやってよー!」と出し物の計画を肴に勢いよくビールジョッキを傾けていた。


「あ、二人もなんかやってよ」


と先輩は僕と隣にいた大矢三四郎に白羽の矢を立てた。


僕と大矢は目を見合わせて、


「いや~」


と首を傾けた。


「はい、やる、決まりね」


ご機嫌な先輩の勢いは止まらず、そのまま決定事項となり、平和な僕らの人生の先に突然、"結婚式の出し物"という大きな山が現れた。


結婚式までまだ数か月あった。


まだ山は小さく見える。しかし人生は止まらない。僕らは歩き続けてしまっている。日に日にその姿は大きくなり、気づいたときにはもう二人で山道の入り口に立っているのだ。


人前でもじもじするのは実に嫌なものである。

それを回避する方法は1つである。


「準備」だ。


なにをするかを決めて、練習をしよう。


そうだろう、三四郎。


お互いにバイトもある、稽古もある、友達との飲み会もある。

しかしながらもし結婚式当日にもじもじとしながら出し物をすることになったら、俺たちはひどく後悔するんじゃないだろうか。


"たかが"結婚式の出し物、"されど"結婚式の出し物という言葉を用いて比較をしたら、"されど"が小池百合子並みの圧勝なのではないか。


これはされどだ、されどだよ、三四郎。


ふと三四郎を見ると、飲み会の最中だというのに、こんな重大な任務を言い渡された直後だというのに、アイコスを吸いながら携帯ゲームに興じていた。


おい、のんきだな、三四郎。


「ねぇ、いけんの?」


僕は尋ねた。

すると彼はこう返した。


「なにが?」


先が思いやられたところで、つづくよ、三四郎。

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