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祝婚―5

先輩の結婚式当日。


受付の準備を頼まれた僕と三四郎は朝方の新幹線で軽井沢へと向かった。


僕がサンドイッチを食べていると、三四郎は割箸をぱかっと割って、

チップスターを一枚その箸でつかみ、口に運んだ。


「俺、ポテトチップスとかも箸で食べるタイプなんだよね」


まだ寝起きのザラザラした声で三四郎は言った。


僕は相槌を打たずパソコンを開き、本番用の音源を三四郎に聞かせる準備をした。


カラオケに選曲をしに行って以来、一度も練習をしないまま当日を迎えた。


僕らがコブクロの「永遠にともに」をこのピアノ伴奏のみの音源で歌うのは、

数時間後の本番が初めてなのである。


そして名前を呼ばれていきなりコブクるわけではない。

挨拶がある。コブクる前に、みじかい祝辞を述べるのだ。


普段牛丼しか食べていない僕らの口から、華やかな宴を彩る言葉がでてくるのだろうか。


想像してみるも、持ちなれないシャンパン細グラスに頼りながら、

モジモジとする画しか浮かばず、すぐに首を横に振った。


拙い語彙力はすぐに尽きる。

沈黙が続き、会場に空調の音だけが響くのはこわい。


そうだ、BGMを入れようと思いつき、伴奏が始まる前に、

オアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」を差し込んだ。


当時は”前奏が劇的で登場っぽい”などの理由で差し込んだこの曲だが、

のちのち歌詞の意味の和訳をネットで調べてみたら、


「共に歩くには手遅れだと知っていながら」


「彼女の気持ちが離れていく」など、


とても結婚式で流してよい代物ではないのだった。


音源を確認した三四郎は、


「オッケーす」と、


振りを一度見ただけで覚えられるジャニーズのアイドルのように答えた。


軽井沢は意外と近く、東京から新幹線で1時間強。


新幹線を降りて駅を出ると、すぐにタクシーを拾って、あっという間に会場についてしまった。


先輩が頭上で両手を大きく振って出迎えてくれた。


「ありがとね~、朝早いとこ」


晴れ舞台を前にした先輩の笑顔は爽やかだ。


「あそこのロッカーに荷物置けるみたいだから」


僕らはロッカールームに入って、礼服に着替えた。


そしてシャツのボタンを留めながら三四郎が言った。


「え、てか、練習しないとやばくね?」


やっとだ。

やっと彼は気づいた。

だがこれから受付準備。

式までノンストップだ。

練習する時間はない。


「だから言ったじゃん何度も」


そう僕が言っても、

急にソワソワしだした三四郎は止まらない。


「えーやばいやばいやばい」


もしかしたら大恥をかくかもしれない。

もしかしたら彼を糾弾してしまうかもしれない。


だがオアシスが歌っている。

怒りを込めて振り返ってはならないと。

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